動画編集の案件を1本30,000円で受注できると、単価だけを見れば条件のよい仕事に感じます。しかし、その案件に20時間かかっていたらどうでしょうか。さらに、販売手数料や有料素材などを差し引けば、実際に手元へ残る金額は30,000円ではありません。
副業で動画編集を続けるうえで確認したいのが、案件ごとの「実質時給」です。これは、売上を編集時間だけで割るのではなく、手元に残る金額と、連絡や修正を含めた全作業時間から求めます。
実質時給が分かると、値上げが必要なのか、作業時間を短縮すべきなのか、追加作業を料金へ反映すべきなのかが見えてきます。感覚だけで「忙しいのに稼げない」と悩むより、改善する場所を具体的に判断できます。

単価が高い案件と、採算のよい案件は同じとは限りません。金額だけで判断せず、その仕事に使った時間を一度確認してみてください。
この記事では、動画編集の実質時給を計算する方法を、具体例を交えながら解説します。副業として無理なく続けるために、最低限記録したい項目と、時給が低かったときの改善順も紹介します。
動画編集の実質時給とは

実質時給とは、案件から実際に残る金額を、その案件へ使ったすべての時間で割ったものです。ここで重要なのは、売上金額ではなく「受取額から案件ごとの経費を引いた金額」を使うことと、編集以外の時間も含めることです。
実質時給の基本式
(受取額-案件ごとの経費)÷案件に使った全時間=実質時給
例えば、30,000円で販売した案件でも、利用するサービスの手数料が差し引かれる場合は、30,000円をそのまま計算に使いません。振り込まれる金額を基準にし、さらに案件のために購入した素材や音源などを差し引きます。
税金や社会保険料まで含めた「最終的な手取り」は個人の状況によって異なります。この記事では、案件同士を比較するための採算確認として計算します。
売上だけを見ていると採算を判断できない理由
同じ30,000円の案件でも、5時間で終わる仕事と20時間かかる仕事では、負担が大きく異なります。動画の完成尺が同じでも、元素材の長さ、テロップ量、素材探し、演出、修正回数によって作業時間は変わります。
また、作業時間を編集ソフトに触れている時間だけで考えると、実際よりも高い時給が出てしまいます。見積もりや連絡、素材のダウンロード、書き出し、アップロードも、その案件を受けなければ発生しなかった仕事です。
- 表示されている販売価格だけで計算している
- 編集ソフトを操作した時間しか記録していない
- 修正と再書き出しの時間を含めていない
- 有料素材や保存容量などの経費を忘れている
- 短い連絡時間を「作業ではない」と考えている
これらを含めずに計算すると、数字上は目標時給を超えていても、実際には自由な時間がほとんど残らない状態になります。
実質時給の計算に必要な3つの数字
1.販売価格ではなく実際の受取額
最初に、依頼者からいただいた金額ではなく、手数料などが差し引かれた後の受取額を確認します。プラットフォームを利用する場合は、料金体系が変更される可能性もあるため、その都度、管理画面や公式案内で確認してください。
直接契約であっても、決済手数料や振込手数料が発生する場合があります。案件ごとの比較では、同じ基準で数字を記録することが大切です。
2.その案件だけに必要だった経費
有料素材、音源、フォント、外注費、記録媒体の購入など、その案件のために追加で発生した費用を差し引きます。毎月支払っている編集ソフトや通信費まで細かく配分すると続かなくなる場合は、まず案件ごとの直接経費だけでも構いません。
慣れてきたら、編集ソフト、クラウドストレージ、機材などの共通経費を月単位で確認し、動画編集全体の利益も別に計算すると、事業としての状態がより分かりやすくなります。
3.連絡や修正を含めた全作業時間
時間は、編集開始から初稿を書き出すまでだけではありません。次のような工程を含めて記録します。
- 募集案件を探して応募文を作る時間
- 相談内容を読み、質問と見積もりを作る時間
- 素材の確認・ダウンロード・整理
- カット、テロップ、音声調整などの編集
- 書き出しと動画全体の確認
- アップロードと納品メッセージの作成
- 修正内容の確認、再編集、再納品
- 請求やデータ整理などの事務作業

5分程度の連絡でも、何度も発生すると大きな時間になります。細かく正確に測るより、まずは漏らさず記録することから始めましょう。
具体例で実質時給を計算する
例1:販売価格30,000円、全作業時間10時間
ここでは計算を分かりやすくするため、手数料差し引き後の受取額を仮に24,000円、案件用の有料素材を1,000円、全作業時間を10時間とします。
計算例
(受取額24,000円-経費1,000円)÷10時間=実質時給2,300円
販売価格だけを10時間で割ると3,000円ですが、実際に残る金額で計算すると2,300円です。この差を把握せずに受注計画を立てると、目標収入へ届くために想定より多くの案件が必要になります。
例2:修正が増えて作業時間が15時間になった場合
同じ受取額と経費でも、修正や素材差し替えによって全作業時間が15時間になると、計算は次のように変わります。
修正増加後の計算例
(受取額24,000円-経費1,000円)÷15時間=実質時給約1,533円
料金は変わっていなくても、5時間増えただけで実質時給は大きく下がります。この場合、単純な値上げだけでなく、ヒアリング、初稿前の確認、修正条件の見直しが改善候補になります。
例3:作業を8時間へ短縮できた場合
料金と品質を変えず、テンプレートや確認手順を整えて8時間で完了できれば、実質時給は2,875円になります。
時短後の計算例
(受取額24,000円-経費1,000円)÷8時間=実質時給2,875円
単価を上げなくても、迷う時間や繰り返し作業を減らすことで採算は改善します。ただし、納品前確認を省くなど、品質を落として時間を短縮する方法は修正や信頼低下につながるため避けます。
作業時間は工程別に記録する
合計時間だけでも実質時給は計算できますが、改善につなげるには工程別の記録が役立ちます。「編集に時間がかかった」という記録だけでは、どこを直せばよいか分かりません。
- 相談・見積もり:30分
- 素材確認・整理:45分
- カット編集:2時間
- テロップ・画像・演出:3時間
- 音量・色調整:45分
- 書き出し・確認・納品:1時間
- 修正対応:1時間
このように分けると、素材整理に時間がかかる案件なのか、テロップ量に対して料金が足りないのか、修正が採算を下げているのか判断できます。次回の見積もりでは、時間がかかっている条件を料金または作業範囲へ反映します。

私は作業時間だけでなく、なぜ時間がかかったのかも短く残すようにしています。「素材探しが30点あった」「修正で構成が変わった」など、原因が次の見積もりに役立ちます。
初心者は何件記録すれば判断できる?
最初の1件だけで「自分は編集が遅い」「この案件は赤字だ」と決める必要はありません。初めて扱う編集では、操作を調べる時間や、手順を考える時間が多くなります。まずは同じような内容の案件を3件程度記録し、平均を確認してください。
ただし、明らかに作業範囲が増えている、睡眠時間を削らなければ納期に間に合わない、依頼内容が受注後に何度も変わる場合は、3件続ける前に条件を見直します。経験のために受ける案件にも、時間と回数の上限を決めておくと安心です。
学習を兼ねた時間は、純粋な案件作業と分けて記録しても構いません。分ける場合でも、依頼者へ約束した納期を守るために実際に必要だった時間として、合計は確認しておきます。
目標時給から必要な単価を逆算する
目標とする実質時給が決まっている場合は、予想作業時間から必要な受取額を逆算できます。
必要な受取額の基本式
目標実質時給×予想作業時間+案件ごとの経費=必要な受取額
例えば、目標実質時給を3,000円、全作業時間を8時間、案件経費を1,000円とすると、必要な受取額は25,000円です。販売価格を決めるときは、利用するサービスの手数料も考慮し、受取額が25,000円になる金額を確認します。
私が目標としているのは、安い案件を大量に受けることではなく、平均受注額を30,000円へ近づけながら、1件ごとの品質を保つことです。副業では使える日数と時間が限られるため、必要な収入を受注本数だけで解決しようとすると、心身ともに余裕がなくなります。
実質時給が低いときの改善順
計算結果が目標より低くても、すぐに値上げだけを考える必要はありません。原因によって改善方法は異なります。私は、次の順番で見直すことをおすすめします。
- 記録漏れをなくす:受取額、経費、全作業時間を同じ基準で記録する
- 無料で追加している作業を確認する:素材探し、サムネイル、大幅修正などを洗い出す
- 見積もり条件を具体化する:素材尺、完成尺、テロップ量、演出、納期を料金へ反映する
- 迷う時間を減らす:フォルダ、プリセット、確認表、文章テンプレートを整える
- 修正の原因を減らす:参考動画と優先順位を初稿前に確認する
- 単価または作業範囲を見直す:品質を維持できる条件を次回受注前に提示する
- 採算が合わない案件を手放す:改善しても続けられない場合は、新規受注の余白を作る
特に注意したいのは、作業時間を減らすために確認を省くことです。誤字や書き出しミスが増えれば、修正と再納品によって、かえって時間が増えてしまいます。減らすのは品質に必要な工程ではなく、探す、迷う、同じ内容を何度も入力するといった繰り返しです。
継続案件は定期的に計算し直す
継続依頼は、営業の時間が減り、依頼者の好みも理解できるため、採算がよくなりやすい仕事です。一方で、少しずつ作業が追加され、最初よりも負担が増えていることがあります。
完成尺が長くなった、テロップ量が増えた、素材探しが追加された、短納期が通常になったなどの変化があれば、直近3件ほどの平均時間を確認します。毎回の負担になっている場合は、次回受注前に料金または作業範囲の見直しを相談してください。
継続していただいている感謝と、無理な条件を受け続けることは別です。品質を維持して長くお付き合いするために必要な見直しであることを、作業内容と数字をもとに丁寧に説明します。
実質時給を確認するチェックリスト
- 販売価格ではなく実際の受取額を使った
- 案件のために追加で発生した経費を差し引いた
- 見積もりと連絡の時間を含めた
- 素材確認・整理・ダウンロードを含めた
- 書き出し・確認・アップロードを含めた
- 修正・再確認・再納品を含めた
- 工程別に時間がかかった原因を記録した
- 次回の見積もりや作業範囲へ反映した
毎回細かく計算することが負担なら、まずは案件終了時に、受取額、経費、合計時間、実質時給の4項目だけを残してください。記録を続けられることのほうが重要です。
まとめ|単価と時間の両方を確認する
動画編集の採算は、1本の販売価格だけでは判断できません。手数料を差し引いた受取額から案件経費を引き、連絡や修正を含めた全作業時間で割ることで、実際の働き方に近い時給を確認できます。
実質時給が低いと分かったときは、落ち込む必要はありません。無料で追加している作業、時間がかかる工程、修正が増える原因が見つかれば、次の見積もりや運営方法を改善できます。
副業で大切なのは、受注本数を増やし続けることではなく、限られた時間でも品質を守れる単価と作業範囲を作ることです。案件ごとの数字を残し、自分にとって無理なく続けられる条件へ少しずつ近づけていきましょう。

実質時給は、自分を責めるための数字ではありません。次はどこを改善すればよいかを教えてくれる、働き方の記録として使ってください。
次の見積もりへ反映する方法は、動画編集の見積もりの作り方で詳しく解説しています。条件の悪い案件を避けたい方は、動画編集で受けないほうがいい案件もあわせてご覧ください。
