動画編集を始めた方から、よく次のような相談をいただきます。
「納品した動画がYouTubeで公開されました。自分の実績として、ポートフォリオへ載せても大丈夫でしょうか?」
気持ちはよく分かります。実案件は、自分がどのような編集を任されたのかを伝えやすく、次の受注にもつながる大切な実績です。特に実績が少ない時期ほど、少しでも早く掲載したくなると思います。
しかし、私の答えは「公開されている動画でも、許可を確認するまでは掲載しない方がよい」です。
完成動画が一般公開されたことと、編集者が制作実績として使ってよいことは同じではありません。動画そのものが公開済みでも、「誰が依頼したか」「ココナラで購入したか」「誰が編集を担当したか」といった取引情報は、別に扱う必要があります。

実績を増やすための無断公開で、これまで積み上げた信頼を失っては意味がありません。迷ったときは、公開しない状態で確認するのが安全です。
この記事では、ココナラの機密保持契約(NDA)で守られる情報、公開済み動画でも確認が必要な理由、実績公開の許可をいただく方法、許可が得られない場合のポートフォリオ作成まで詳しく解説します。
最初にお伝えしたいこと
この記事は、動画編集者が実績公開前に確認すべき実務上の考え方をまとめたものです。個別の契約内容によって判断は異なります。契約書や依頼者からの指示を優先し、法的な判断が必要な場合は専門家へご相談ください。
結論|許可が確認できるまで実績として公開しない

実案件をポートフォリオ、ブログ、SNS、YouTubeなどへ掲載したい場合は、最低でも次の5つを確認します。
- 契約:NDA、利用規約、業務委託契約、依頼時の条件に反していないか
- 公開範囲:動画全体、数秒の抜粋、静止画、社名、ロゴのどこまで使えるか
- 掲載場所:ココナラのポートフォリオ、個人サイト、SNSなど、どこへ載せてよいか
- 公開時期:納品後すぐなのか、依頼者側の公開後なのか、公開開始日が決まっているか
- 許可の記録:誰が、何を、どこまで許可したか文章で確認できるか
このうち一つでも分からない場合は、推測で公開せず、依頼者へ確認してください。「動画が公開されたから大丈夫」「以前の依頼者も掲載できたから今回も大丈夫」とは判断できません。
ココナラのNDAとは
NDAは、Non-Disclosure Agreementの略で、日本語では機密保持契約と呼ばれます。仕事を通じて知った秘密情報を、許可なく第三者へ開示したり、決められた目的以外へ使ったりしないための契約です。
ココナラ公式ヘルプでは、トークルーム、見積り相談、メッセージ機能など、非公開のやり取りで双方が知った秘密情報を第三者へ漏らさない契約と説明されています。ココナラでは利用規約にも機密情報の取り扱いが定められており、出品者は本人確認の承認後、改めてココナラとNDAを締結できます。
ここで注意したいのは、NDAを締結した出品者だけが秘密を守ればよいわけではないという点です。NDAの表示がない場合でも、利用規約、個別の契約、著作権、個人情報などへの配慮は必要です。NDA未締結を「自由に公開できる」という意味に受け取ってはいけません。

NDAのマークは、秘密を守る姿勢を分かりやすく示すものです。ただし、マークの有無だけで公開可否を決めず、案件ごとの条件まで確認しましょう。
NDAで守られる情報は完成動画だけではない

動画編集者が預かる情報は、動画ファイルだけではありません。ココナラのNDAでは、サービス購入者に関する情報、相談・依頼・購入した事実、購入前後を問わず購入者から受け取った情報などが機密情報として示されています。
1.依頼者に関する情報
氏名、会社名、担当者名、メールアドレスなどの個人情報だけではありません。公開前の商品、社内の担当体制、今後の事業、動画の運用方針など、依頼者を特定したり内部事情を推測できたりする情報も慎重に扱います。
2.相談・依頼・購入した事実
見落としやすいのが、「その方が自分へ相談した」「ココナラでサービスを購入した」という事実です。完成動画が公開されていても、依頼先や取引経路まで公表してよいとは限りません。
たとえば、公開済みのYouTube動画へリンクしながら「○○社からココナラで依頼をいただきました」と書けば、動画だけでなく取引関係まで明らかにします。ここは、動画が一般公開されているかどうかとは別に確認が必要です。
3.受け取った元素材
カメラの撮影データ、音声、写真、ロゴ、BGM、台本などには、完成版で使われなかった部分も含まれます。NGテイク、言い間違い、編集で削除した発言、個人情報が映り込んだ場面を、制作過程として公開してはいけません。
4.公開前の企画や台本
新商品、採用、研修、キャンペーン、YouTubeの企画などは、公開日まで秘密にする必要があります。公開予定日を知らずにポートフォリオへ先行掲載すると、依頼者の発表計画を崩す可能性があります。
5.トークルームや見積もりの内容
依頼者とのメッセージ、見積もり、修正指示、評価前のやり取りは、実績を証明する材料としてスクリーンショットで公開しないでください。名前を隠しても、文章、日時、画像、案件内容の組み合わせから特定される場合があります。
ココナラ公式ヘルプでも、外部サイトで自分のサービスを宣伝すること自体は直ちに違反とされていない一方、非公開ページの情報を漏らす行為は禁止事項に該当すると案内されています。また、提供物をポートフォリオへ掲載できるかは、購入者と事前に調整するよう示されています。
公開済みの動画なら実績として使ってよい?
依頼者のチャンネルですでに公開されている動画を見ると、「誰でも見られる動画だから、自分も掲載できる」と考えやすくなります。しかし、公開済みであることだけでは判断できません。
- 動画の視聴は許されていても、データの転載や再配布までは許されていない
- 依頼者と編集者の取引関係は公表されていない
- 出演者、撮影者、音楽、写真などの権利を依頼者が管理している
- 企業名やロゴを自分の広告へ利用する許可は別に必要になる場合がある
- 期間限定公開や広告配信用など、利用目的が決められていることがある
URLを貼るだけ、サムネイルを載せるだけ、数秒だけ切り抜くだけでも、確認不要とは限りません。自分の制作実績として、どの形で紹介したいのかを具体的に伝え、許可をいただきます。
NDAがなければ自由に公開できるという誤解
案件ごとに個別のNDAへ署名していないと、「秘密保持契約はないから大丈夫」と考える方がいます。しかし、公開可否はNDA一枚だけで決まりません。
- ココナラの利用規約や禁止事項
- 購入時、見積もり時、トークルームで合意した条件
- 企業から提示された業務委託契約や秘密保持条項
- 動画、音楽、画像、ロゴ、出演者に関する権利
- 個人情報、プライバシー、公開前情報の取り扱い
どれか一つに反すれば、個別NDAがないことは公開の根拠になりません。逆に、NDAがあっても依頼者から必要な範囲の公開許可を得られる場合はあります。ただし、許可する権限を持つ方から、契約に定められた方法で確認する必要があります。
実績公開の許可は文章で残す

「実績にしていいですよ」と口頭で言われただけでは、掲載範囲や場所が分かりません。時間が経った後に双方の記憶が異ならないよう、具体的な内容を文章で確認します。
- 掲載内容を示す:動画全体、抜粋、静止画、会社名、ロゴなど、実際に使うものを伝える
- 許可を確認する:掲載場所と公開時期を含め、依頼者の回答をいただく
- 記録を保管する:許可された範囲と回答を、案件記録と一緒に残す
ココナラのNDAでは、事前に開示者の書面による承諾を得ず、第三者へ開示・漏洩したり、サービス上で利用する以外の目的に使ったりしない旨が示されています。別途契約書で承諾方法が指定されている場合は、その方法を優先してください。
実績公開をお願いする確認文
依頼者へ送る例文
このたび制作した動画につきまして、今後の制作実績として掲載させていただけるか確認させてください。
【掲載を希望する内容】完成動画のうち○秒間/サムネイル画像1点
【掲載場所】ココナラのポートフォリオ/個人ブログ
【表示する情報】チャンネル名・会社名は非表示、担当した編集内容のみ記載
【公開時期】貴社で動画を公開された後
掲載前に実際の画面をご確認いただくことも可能です。公開が難しい場合は掲載いたしませんので、遠慮なくお知らせください。
依頼者が断りやすい一文も入れておきます。実績掲載を取引の条件にしていない場合、許可しないことで気まずくなるような頼み方は避けてください。
「一部なら可能」と回答された場合
使用できる秒数、ぼかす場所、社名・ロゴ、音声、公開時期を再確認します。自分の判断で別の箇所へ差し替えたり、「これくらいなら同じ」と範囲を広げたりしてはいけません。
範囲を確認する例文
ご承諾いただき、ありがとうございます。念のため、掲載範囲について確認させてください。
動画の0分15秒から0分30秒までを使用し、会社名とロゴは表示しない形で、ココナラのポートフォリオへ掲載する認識でよろしいでしょうか。
公開前に確認用画像をお送りします。
依頼者の許可だけで終わらない場合もある
依頼者から許可をいただいても、動画に含まれるすべての権利を自由に使えるとは限りません。依頼者自身が、出演者、撮影者、音楽、写真、商品ロゴなどの利用条件を設けている場合があります。
- 出演者:広告やポートフォリオへの二次利用が許可されているか
- 音楽・効果音:依頼者の動画以外でも利用できるライセンスか
- 写真・イラスト:購入素材や提供素材を別媒体へ転載できるか
- 企業名・ロゴ:制作実績として表示する社内承認が必要か
- 撮影場所・商品:公開範囲や公開時期に制限がないか
判断できない場合は、「依頼者から許可をいただいたから問題ない」と進めず、素材の権利と利用範囲も確認します。
実績公開でやってはいけないこと
- 公開済み動画を許可なくダウンロードし、自分の動画として再投稿する
- 元素材、NGテイク、未公開部分をビフォーアフターとして見せる
- トークルーム、見積もり、修正指示、購入画面をスクリーンショットで公開する
- 依頼者名を隠しただけで、社名、声、映像、案件内容をそのまま載せる
- 許可された掲載場所とは別のSNSや教材へ転用する
- 公開期限や削除依頼を無視して掲載を続ける
- 外注先へ許可なく素材を渡し、ポートフォリオ制作を任せる
ぼかしやモザイクを入れれば必ず公開できるわけでもありません。匿名化しても案件を推測できる場合があり、素材を別目的で使用する点は変わらないためです。まず許可を確認してください。
許可をいただけないときのポートフォリオ作成方法
実績公開を断られても、その案件が無駄になるわけではありません。秘密を守って納品したこと自体が、仕事として当然であり、大切な信頼につながります。
公開できる作品が不足する場合は、依頼者の素材を使わず、架空作品を作成します。
- 自分が受けたい動画ジャンルを一つ決める
- 自分で撮影した素材、利用条件を確認した素材、または自作素材を用意する
- 実案件で身につけた編集技術を使い、別の内容として制作する
- 架空作品または自主制作であることを明記する
- 得意分野、制作期間、料金感、依頼先を一緒に伝える
実績ゼロから案件応募に使えるポートフォリオを作る方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
作品の掲載順や、依頼者へ伝える6項目を整えたい方は、次の記事もご覧ください。
誤って公開してしまったときの対応
許可を確認していない素材や取引情報を公開したことに気づいたら、放置せず、事実を確認して対応します。
- 公開を止める:投稿、ページ、動画を非公開または削除し、拡散を止める
- 掲載内容を確認する:公開期間、閲覧範囲、含まれていた情報を整理する
- 依頼者へ連絡する:事実と現在の対応を伝え、必要な指示を確認する
- 追加対応を行う:削除、検索結果、共有先など、案内された範囲を確認する
- 再発防止を残す:公開前チェックと許可記録の保管方法を見直す
言い訳や自己判断で状況を小さく見せず、何を公開し、現在どう対応したかを正確に伝えます。判断に迷う場合は、契約書、ココナラの公式窓口、必要に応じて専門家へ確認してください。
トラブル時にメッセージや提出履歴を整理する方法は、次の記事にまとめています。
ココナラでNDAを締結する流れ
ココナラ公式ヘルプでは、出品者がNDAを締結するには、先に本人確認申請の承認が必要と案内されています。その後、本人確認情報をもとにココナラと契約を締結します。
- ココナラの本人確認申請を行う
- 本人確認の承認を待つ
- 機密保持契約の内容を最後まで確認する
- 案内された画面から契約を締結する
- プロフィールなどの表示を確認する
契約内容は変更される可能性があります。操作を行うときは、この記事だけで判断せず、必ずココナラの最新画面と公式ヘルプをご確認ください。
実績公開前の最終チェックリスト
- NDA、利用規約、個別契約を確認した
- 完成動画が公開済みでも、実績利用の許可を別に確認した
- 掲載する動画・秒数・静止画を具体的に示した
- 社名、ロゴ、出演者、音楽、素材の扱いを確認した
- 掲載場所と公開時期を確認した
- 許可する権限を持つ方から回答をいただいた
- 許可された範囲を文章で記録した
- 公開前に依頼者へ確認画面を見せる準備をした
- 許可が不明な情報を削除した
- 削除依頼があった場合の対応方法を決めた
まとめ|実績より先に依頼者の信頼を守る
ココナラの動画編集で受け取る情報は、完成動画だけではありません。依頼者情報、相談・購入した事実、元素材、企画、台本、非公開のメッセージなども慎重に扱う必要があります。
完成動画が公開済みでも、自分のポートフォリオへ掲載してよいとは限りません。掲載内容、場所、時期、表示する情報を具体的に伝え、許可を文章で確認してください。
許可をいただけない場合は、依頼者の素材を加工して代用するのではなく、完全な自主制作へ置き換えます。公開できる実績の数より、秘密を任せられる編集者であることの方が、長い仕事では大切です。

実績を増やしたいときほど、確認を省かないでください。依頼者の情報を守れることも、動画編集者として提供できる大きな価値です。

