動画編集を副業で始めた方から、次のような相談を受けることがあります。

案件は取れるようになりましたが、作業時間に対して報酬が少なく、続けるのがつらいです。収入を増やすには、今より多くの案件を受けるしかないのでしょうか
動画編集を始めたばかりの時期は、実績を作るために低い価格の案件へ応募することもあります。しかし、そのまま受注本数だけを増やすと、納期と修正に追われ、心身ともに疲弊してしまいます。
副業では、本業や家庭の時間を除くと、編集に使える時間は限られています。
私自身、編集を始めた頃は低単価の案件を受けすぎて寝る間も惜しみ編集をしていましたが、現在は、動画編集の仕事がある日は1日約3時間以内、週3日程度を目安に作業しています。時間を無制限に増やせないからこそ、低単価の案件を大量に受ける働き方は選んでいません。
目指しているのは、安い案件を含めた平均受注額を一件3万円ほどにし、少数の案件へ十分な時間を使える状態です。
これは、理由もなく料金だけを引き上げるという話ではありません。
作業範囲を明確にし、得意分野を絞り、品質と対応を安定させ、「この人に任せたい」と判断してもらえる材料を積み上げたうえで価格を見直します。
この記事では、副業の動画編集者が受注数を増やさずに単価を上げるための考え方と、私が大切だと考えている7つの段階を説明します。

受注本数を増やすことだけが、収入を増やす方法ではありません。限られた時間で品質を保てる価格と仕事量を考える必要があります。
先に結論:単価は「編集技術」だけでなく、任せやすさの合計で決まる
単価を上げるために必要なのは、高度なアニメーションを追加することだけではありません。
依頼者が感じる価値は、次の要素の合計です。
- 求める動画を作ることのできる編集技術
- 得意分野に対する理解
- 要望を整理するヒアリング力
- 安定した品質
- 納期と連絡への安心感
- 修正を必要以上に増やさない進行
- 依頼者の確認時間を減らす工夫
- 次回も同じ品質を再現できる仕組み
単価を上げる7段階は、次のとおりです。

- 一件ごとの実質時給を把握する
- 基本料金に含む作業を決める
- 得意分野と選ばれる理由を明確にする
- 実績と依頼者の評価を整理する
- 品質と対応を再現できる形にする
- 追加作業を料金へ反映する
- 新規案件から価格を見直す
いきなりすべてを変える必要はありません。まずは現在の案件で、何に何時間使っているかを確認します。
受注数を増やすだけでは、副業時間が足りなくなる
例えば、一件、数千円の報酬でも短時間で終わるショート動画やリール動画なら、条件が合うことはあります。
一方で、表示されている報酬だけを見て判断すると、実際の負担を見落とします。
動画編集には、編集画面を操作する時間以外にも、次の作業があります。
- 相談内容の確認
- 素材のダウンロードと整理
- 見積もりの作成
- 依頼者との連絡
- 参考動画の確認
- 画像やBGMなどの素材探し
- 書き出しと完成動画の確認
- アップロード
- 修正対応
- データの保管と整理
一件5,000円の案件を3件受ければ、売上は15,000円になります。しかし、やり取り、準備、書き出し、修正も3件分発生します。
一件15,000円の案件と同じ売上でも、必要な連絡や納期管理が同じとは限りません。
もちろん、高単価の案件ほど作業量や責任が増える場合もあります。そのため、単純に「高ければ楽」と考えるのではなく、価格と作業範囲を一緒に確認する必要があります。
1.一件ごとの実質時給を把握する
最初に行うのは、値上げではなく現状の確認です。
一件の案件に使った時間を記録します。
- 相談・見積もり
- 素材確認
- カット
- テロップ
- 画像・BGM・効果音
- 書き出し・確認
- 修正
- 連絡・納品
そのうえで、次の式を使います。
実質時給 = 手元に残る報酬 ÷ 案件に使った総時間
ココナラを利用する場合は、購入者が支払った金額ではなく、手数料などを差し引いた後に受け取る金額で考えます。(現在の手数料は22%)
使用するサービスの手数料は変更されることがあるため、計算前に最新の公式情報を確認してください。
参考:(ココナラ、販売時の手数料)https://coconala.com/pages/guide_sell?utm_source=chatgpt.com
一件だけでは、素材の状態や修正によって数字が偏ります。可能であれば、同じ種類の案件を数件記録して平均を確認します。

見積りや連絡に使う時間って意外と大きく、見えない負担になることが多いです。相談から納品までに使った時間を記録してくださいね。
2.基本料金に含む作業を決める
価格が低くなりやすい原因の一つは、基本料金で対応する範囲が広がり続けることです。
例えば「動画編集一式」とだけ書くと、依頼者は次の作業がすべて含まれていると考えるかもしれません。
- 長時間素材から必要な場面を選ぶ
- 複数素材の組み合わせ
- フルテロップを入れる
- 画像を多数探す
- サムネイルを作る
- ショート動画も作る
- プロジェクトファイルを納品する
- 修正へ何度でも対応する
まず、基本料金に含む作業を具体的にします。
基本料金の表示例
- 元動画:○分まで
- 完成動画:○分まで
- カット:不要部分のカット
- テロップ:要点テロップ
- 素材:支給素材を使用
- BGM・効果音:各○点まで
- 修正:初稿提出後○回まで
- 納品:MP4、1920×1080
数字は、自分が提供するサービスに合わせて設定します。未確認の条件を、この例のまま使用しないでください。
範囲を明確にすると、依頼者は料金を比較しやすくなり、編集者も追加作業を説明しやすくなります。
3.得意分野と選ばれる理由を明確にする
「どのような動画でも編集します」だけでは、価格以外の違いが伝わりにくくなります。
単価を上げるには、自分が得意な動画と、任せてもらう理由を明確にします。
例えば、同じYouTube動画でも、必要な知識は異なります。
- ビジネス・解説動画
- エンタメ動画
- 商品・サービス紹介
- インタビュー
- セミナー・講座
- 美容・料理
- 旅行などのVlog
- ゲーム実況
得意分野は、派手な編集ができることだけではありません。
- 専門用語を読み取り、誤字を防げる
- 長い話から要点を整理できる
- 出演者の雰囲気を損なわずにカットできる
- 既存チャンネルのデザインを再現できる
- 依頼者が確認しやすい初稿を作れる
- 一定の納期と品質で継続できる
自分の得意分野、独自性、制作期間、料金の目安、依頼先、人となりをポートフォリオと出品ページで伝えます。
高い料金をお願いする前に、「誰の、どのような依頼に強いのか」が分かる状態を作るのがポイントです。
4.実績と依頼者の評価を整理する
価格を見直すときは、根拠になる材料を整理します。
- 同じ分野の制作実績
- 公開許可を得たポートフォリオ
- 依頼者からの評価や感想
- 継続依頼の実績
- 納期を守った実績
- 対応できる編集内容
- 修正や進行を改善した記録
案件数だけを大きく見せる必要はありません。
依頼者が知りたいのは、自分の動画も任せられるかどうかです。受けたい案件に近い実績を、見つけやすい順番で提示します。
実案件を掲載するときは、依頼者の許可と契約条件を必ず確認します。機密保持契約がある案件や公開許可を得ていない素材を、安易に実績として掲載してはいけません。
「公開してはいけない案件でも、公にせず依頼者だけに見せるなら大丈夫」という安易な考えはやめましょう。「この人は秘密を守れない」と判断されれば、動画編集者として大切な信頼を失うことにもつながります。
公開できる実績が少ない場合は、受けたい案件を想定した自主制作を用意します。
5.品質と対応を再現できる形にする
単価を上げた後も依頼してもらうには、案件ごとに品質が大きく変わらないことが重要です。
私は、次のような内容を案件ごとに記録することをおすすめしています。
- テロップのフォント、色、大きさ
- カットの間
- BGMと音量
- 固有名詞の表記
- 使用する演出(エフェクトやSE)
- 書き出し設定
- 納品前の確認項目
- 修正で確定したルール
テンプレート、プリセット、チェックリストを用意すると、作業を速くするだけでなく、品質のばらつきを減らせます。
品質が安定すれば、依頼者は確認にかかる時間を読みやすくなります。この「安心して任せられること」も、価格の根拠になります。

早く作れることも大事ですが、同じ品質を再現できることが大切です。自分の感覚を、チェックリストや編集ルールに変えてみましょう。)
6.追加作業を料金へ反映する
単価を上げるというと、基本料金を一律に引き上げることだけを考えがちです。
しかし、最初に見直しやすいのは、作業量に応じた追加料金です。
追加料金を検討する作業
- 規定を超える元動画や完成尺
- フルテロップ
- 大量の画像・資料探し
- 複数カメラの同期
- 音声の大幅な修復
- 特殊なアニメーション
- サムネイル制作
- Shortsなど別動画への再編集
- 特急対応
- 規定範囲を超える修正
- プロジェクトファイルの整理・納品
追加料金は、依頼後に突然伝えるものではありません。
出品ページに目安を書き、見積もり時に今回含まれる作業を説明します。
「追加料金を取る」という見せ方より、「基本料金にはここまで含み、今回はこの作業が加わるため総額はいくらです」と説明する方が、依頼者も判断しやすくなります。

7.新規案件から価格を見直す
価格を見直すときは、新規案件から変更する方法が進めやすいと思います。
既存の継続案件は、これまでの条件を前提に依頼されています。理由を説明せず、次回から急に価格だけを変更すると、依頼者が判断できません。
既存顧客へ値上げを相談する場合は、次の内容を整理します。
- いつから変更するか
- どの作業の価格が変わるか
- 変更後に含まれる作業
- 現在までの条件で対応できる期限
- 継続する場合の選択肢

私の場合は、年末のタイミングで値上げの理由をきちんとお伝えしたうえで、料金改定のお願いをしています。
新規相談への伝え方
新規のご相談の場合は、特に値上げのことを伝える必要はありません。値上げした後の料金をそのまま伝えましょう。
今回の内容は、元動画約○分、完成動画約○分、○○までの編集を含むため、料金は○円でご案内しております。料金には、○○、○○、初稿後○回までの修正が含まれます。
既存顧客へ相談する伝え方
このたび、編集料金についてご相談がございます。
これまで長期間にわたり料金を据え置いたまま対応してまいりましたが、その間も編集方法や制作工程を見直し、料金を変更することなく、対応する編集内容の充実やクオリティの向上に努めてまいりました。
また、編集技術や制作環境についても継続的に改善を重ね、より見やすく、内容が伝わりやすい動画をお届けできるよう取り組んでおります。
こうした現在の編集内容や品質を踏まえ、今後も同様のクオリティを維持しながら継続して制作していくため、○月○日以降にご相談いただく動画より、編集料金を○円から○円へ改定させていただきたいと考えております。
なお、現在ご相談いただいている動画につきましては、これまでの料金で対応いたします。
継続してご依頼いただいている中での料金改定となり大変恐縮ですが、今後もご満足いただける動画をお届けできるよう、一本一本丁寧に制作してまいります。
何卒ご理解いただけますと幸いです。
実際に使用するときは、変更理由と条件を自分のサービスに合わせて書き換えてください。
値上げを伝えれば、すべての依頼者が継続するとは限りません。価格が合わなくなる依頼者がいることも想定し、新規相談の反応を見ながら段階的に調整しましょう。
値上げの前に確認したい5つの判断基準
次の項目がそろっているほど、価格変更の理由を説明しやすくなります。
1.現在の価格では、品質を保つ時間が足りない
確認工程を省かなければ納期に間に合わない状態は、依頼者にとっても安全ではありません。
2.基本料金を超える作業が常態化している
画像探しや構成整理などが毎回必要なら、サービス内容と価格を見直します。
3.同じ分野の実績と評価が増えた
受けたい案件に近い実績が増えると、価格以外の判断材料を提示できます。
4.品質と納期を安定して再現できる
一度だけうまくできた状態ではなく、同じ水準を繰り返せるか確認します。
5.新しい価格で断られる可能性を受け入れられる
単価を上げると、受注率が下がることがあります。
すべての相談を受注するのではなく、条件の合う依頼を選ぶ方針が必要です。

値上げして断られるのが不安なときは、新規案件から少しずつ試しましょう。相談数、受注率、作業時間を見ながら調整できます。
単価を上げにくくなる6つの行動
1.実績を増やすために、条件を確認せず受注する
案件数は増えても、自分が続けたい分野の実績にならない場合があります。
2.見積もりのたびに値下げする
価格だけで選ばれる状態が続き、作業範囲の説明が難しくなります。
3.追加作業を黙って無料対応する
依頼者は、どこからが追加作業なのか判断できません。次回も同じ範囲を期待する可能性があります。
4.高度な演出を増やせば高くなると考える
依頼者が必要としていない演出を追加しても、価値になるとは限りません。動画の目的に必要な編集を提案します。
5.競合の価格だけを基準にする
表示価格が同じでも、元動画尺、完成尺、素材、修正、納期などの条件が異なります。
6.忙しいことを理由に価格を上げる
自分が忙しいことだけでは、依頼者にとっての価値は伝わりません。提供内容と変更条件を説明します。
ディレクターにならなくても、動画編集者として単価は上げられる
動画編集の仕事では、単価を上げる方法としてディレクターになる道を勧められることがあります。
複数の編集者を管理し、品質や納期を管理する働き方が合う方もいます。しかし、副業で使える時間が限られている人にとって、連絡、確認、割り振り、トラブル対応を抱えることは簡単ではありません。
ディレクターにならなければ成長できないわけではありません。
動画編集者として、次の価値を高める道もあります。
- 特定分野への理解を深める
- ヒアリングと提案の質を上げる
- 編集品質を安定させる
- 確認しやすい初稿を作る
- 作業範囲と価格を分かりやすくする
- 継続案件のルールを蓄積する
- 限られた時間で高品質に仕上げる
私が目指しているのも、低単価の案件を大量に受けて規模を広げる働き方ではありません。
副業として無理なく続けられる件数に抑え、一件ずつ十分な時間を使い、価格と品質の両方を高める働き方です。
平均受注額3万円を目指す考え方
一件3万円を目指すからといって、すべての動画へ同じ価格を付けるわけではありません。
動画の長さと作業量が違えば、料金も変わります。
大切なのは、月末の売上だけでなく、一定期間の平均受注額と総作業時間を確認することです。

上記は2026年8月に承った動画編集の売り上げになります。
1分以内のショート、10分以内の短尺動画、20分の長尺の動画が混じっています。4件の編集で販売金額165000円、手数料差引後、128,700円、1件あたりの平均金額は32,175円です。
作業時間は、受注から納品までの全ての時間を合わせて27時間以内です。
1日の副業に使える作業時間は多くて3時間で、9日使えば余裕で完了する作業量です。
毎月確認する数字
- 受注件数
- 一件あたりの受注額
- 手元に残る金額
- 一件あたりの総作業時間
- 修正回数
- 継続依頼の件数
- 断った案件と理由
単価が上がっても、作業時間が大幅に増えれば、余裕は生まれません。
反対に、金額が同じでも、ルールが整った継続案件で作業時間を短縮できれば、条件が改善することがあります。
「一件いくら」だけでなく、「何時間使い、どのくらいの品質で、無理なく継続できたか」を確認してください。
こうした振り返りを毎月積み重ねることで、自分が改善すべき部分や伸ばすべき強み、受けるべき案件・避けるべき案件が少しずつ見えてきます。

ただ案件をこなして1か月を終えるのか、それとも結果を振り返り、翌月の仕事に活かすのか。この小さな積み重ねが、半年後、1年後に動画編集者として成長できているかを大きく左右します
単価を上げるための実行チェックリスト
- 相談から納品までの総作業時間を記録した
- 手数料などを引いた受取額で計算した
- 基本料金に含む作業を明記した
- 追加料金になる作業を決めた
- 得意分野を一つ以上説明できる
- 自分に任せる独自性を言葉にした
- 受けたい案件に近い実績を掲載した
- 実績の公開許可を確認した
- 依頼者の評価を見つけやすくした
- 納品前チェックを用意した
- 顧客ごとの編集ルールを記録した
- 新規案件へ適用する価格を決めた
- 価格変更後の相談数と受注率を記録する
- 断られても無理な値下げをしない基準を決めた
まとめ
副業動画編集で収入を増やすために、受注数だけを増やす必要はありません。
受注数を増やさず単価を上げるには、次の7段階で進めます。
- 一件ごとの実質時給を把握する
- 基本料金に含む作業を決める
- 得意分野と選ばれる理由を明確にする
- 実績と依頼者の評価を整理する
- 品質と対応を再現できる形にする
- 追加作業を料金へ反映する
- 新規案件から価格を見直す
価格だけを先に変えるのではなく、依頼者が判断できる根拠を整えることが大切です。
副業で使える時間には限りがあります。低単価の案件を大量に受けて疲弊するより、条件の合う案件へ十分な時間を使い、高品質な動画を納品できる状態を目指してください。
まずは直近の案件について、相談から納品までに使った時間と、基本料金に含めていた作業を書き出してみましょう。

単価を上げる目的は、楽をすることではありません。無理のない件数で品質を守り、依頼者へ長く価値を届けられる働き方を作ることです。
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